ぜんそくかも・・・と言われたら

「えーっ、ぜんそく!! ずっとこれから苦しんでいくのかしら?」と先行き不安な病名宣告がされてしまったという思いを引きづりながら家路へと向かうことでしょう。でもその前に、診断や治療についての正しい知識を持って次の診察にのぞみましょう。

1 ぜんそくの症状は?

ゼーゼーし、苦しそうな息づかいをします。咳もでます。小さいお子さんは苦しいとはいいませんが、はだかにしてよく見ると、息をするごとにお腹をふくらませたり、あばら骨の間のくぼみをへこませたり、のど下や鎖骨のくぼみをへこませたりしているのが見られます。ぜーぜーしなくても「せきぜんそく」と呼ばれる、せきしているものもあります。

2 なぜこのような症状となるのか?

ぜんそくでは、気管支が炎症のためにはれて、そこに「たん」がでて、空気の道をふさぎ、さらにせまくなってしまいます。
また、気管支の周りをかこむ筋肉が縮んで、細さを増していきます。

3 なぜ、ぜんそくになるのか?

子どもの場合、原因のほとんどがアレルギーです。ぜんそくを起こすアレルギー物質として代表的なのが、ダニです。ハウスダストにもダニは含まれていますので、同じです。その他動物のフケや花粉、カビも原因となります。

4 ぜんそくといわれたがほんとうか?

さて本題です。ぜんそくでは上のような症状が起こりますが、1回の症状、1回の診察だけでぜんそくと診断するのは、多くの場合むずかしく、経過の中で判断していくことが大切です。

というのは、風邪の種類の中に気管支に感染し、ゼーゼーさせてぜんそくのような症状をおこすウイルスが何種類かあります。小さい赤ちゃんはそもそも体が小さいために気管支の造りも小さく、ちょっと気管支がはれただけでせまくなり、ぜんそくと同じ状態となります。

その代表がRSウイルスです。RSウイルスに感染すると気管支がぜんそくと同じような炎症の状態となってしまいます。「ぜんそく性気管支炎」や「ぜんそく様気管支炎」といったほんものの「ぜんそく」に似たような診断名で治療されます。

ややこしいのは、将来本物の「ぜんそく」となる人も同じ症状であるため、この時点では区別がつきません。ただし、将来ぜんそくをなる人がRSウイルスにかかるとひどい発作になる場合が多く、RSウイルスの感染で入院するほどになってしまった人の半数が将来アレルギーであったというデータもあります。 

5 では、どのようになったらぜんそくと診断できるのか。

アレルギー体質の人も、そうでない人も何回もゼーゼーし、繰り返す人がある割合でいます。しかし、アレルギーでない人の多くは、2歳を越えるあたりからぜーぜーしなくなってきます。アレルギーのある人は、その後も繰り返していきます。

つまり、これからぜんそくの発作を繰り返していくかどうかは2歳を過ぎないとわからないということです。アレルギーについては血液検査がありますが、2歳までは反応が弱いためにやってもでないこともあり、決め手にはなりません。

2歳過ぎるまでぜんそくと診断するまで待つのかどうか。

繰り返す発作を予防する手立てがある現在、宣告を恐れるあまり、何もせずにひたすら発作のたびに苦しむというのは得策ではありません。

「3回ぜーぜーしたらぜんそくと診断」

これが、現時点でのコンセンサス(共通認識)となっています。普通の人でもウイルスで1度や2度はゼーゼーすることもあるけど、3回は起こさないでしょうということからです。ただし、入院するほどの重症の発作が起こった場合には、血液検査も参考にしながらもっと早い時点でなされる場合もあります。3歳以上ではアレルギー検査で陽性であれば、症状と照らし合わせ早い時点でぜんそくと診断される場合もあります。

6 ぜーぜーするだけがぜんそくの発作ではない。

ぜんそくの人は、アレルギー物質を吸い込んだときにゼーゼーしますが、ふだんは大丈夫でも風邪を引いてゼーゼーする場合もあります。また、はしゃいだり、運動をした後にゼーゼーする場合もあります。ぜーぜーすればわかるのですが、ただ咳をするというのもぜんそくのサインです。風邪の症状と区別がつきにくいのですが、ぜんそくの場合には朝方、夜だけ、はしゃいだ時だけと変なときにせき込むことがあります。これは、アレルギー物質を吸い込んで、気管支が常にくすぶった炎症状態にあるのですが、乾燥した冷たい空気、運動、けむりなどの刺激によって症状として現れます。なかなか気づきにくい症状ですが、これもぜんそく発作といえるでしょう。

7 ぜんそくは早く診断されたほうがいいのか。

以前は「ぜんそく」という診断は重い宣告であり、医療側も診断には慎重となり、「ぜんそくらしい」とかしって、その宣告を猶予してきました。2歳を越えれば大丈夫になる人もいるので、そのような人にまで精神的負担をかけたくないという思いからでした。また、予防する方法も確立されていなかったため、発作のたびに治療をし、何回も発作をおこした人だけが治療の対象でした。その間に適切な治療がなされず、診断までの間、何回も苦しい思いをしてからのスタートでしたの。

 今は早めに診断をして、早めに治療をしてできるだけ苦しい思いをさせないというのが、コンセンサスとなっています。治療薬も副作用の少ないものであり、「早めに始めてしまい、落ち着けば減らしていく」というのが、治療の基本となっています。手控えた治療は後追いの治療となり、生活が制限された上、症状を長引かせてしまいます。

8 ぜんそくの治療は?

 抗ロイコトルエン拮抗薬と吸入ステロイドが2本柱となっています。年齢、発作を起こす頻度、重症の度合いからその組み合わせがかわります。その他気管支を広げるテープや吸入薬も使われます。治療は発作をおこす頻度で変わります。
基本:抗ロイコトルエン拮抗薬(オノン、シングレア、キプレスなど)
   吸入ステロイド(フルタイド、キュバール、パルミコートなど)
その一つだけであったり、両者を組み合わせて治療されます。
 発作を季節ごとしか起こさない人はその期間だけ治療されます。ただし、運動して咳をするなど発作とは思われない症状が続いている人もいますので、発作症状だけで判断していると大きな発作が突然起こったりするので、判断には注意が必要です。毎月起こすなど休む暇の無い人は毎日の治療となります。
それでも症状の落ち着かない人は
テープ剤や吸入薬セレベント(あるいはアドエア)、インタール、テオフィリン製剤(テオドールなど)が追加されます。ただし、最近ではテオフィリン製剤はけいれんの副作用が問題となり、あまり使われなくなりつつあります。